8月11日、6時30分起床。小鳥の鳴き声とともに清々しい朝を迎えた。早寝早起きは旅行の基本だ。美味しい各種ハム・ソーセージと種類豊富なブロートヒエンなどで朝食を済ませ、8時30分にバイエルン地方目指して出発した。

シュトウットガルトやウルムを通り過ぎ一路南へ。約3時間もするとロマンチック街道の終点フュッセンにさしかかる。
前方にはドイツアルプスの嶺峰が間近に迫り、高原地特有の爽やかな空気に満ちてくる。真っ青な空の下、牧歌的な風景を眺めながらのドライブは快適そのもの。予定通り、昼過ぎには水と緑に包まれた街シュヴァンガウに到着した。
おとぎの国から抜け出てきたような可愛い家並みの屋根越しに山間を望むと、右手の山上にそびえ建つ黄色いホーエンシュヴァンガウ城が見える。その少し上方左手に峻険な岩壁に寄り添い、白鳥があたかも翼を休めるようにそびえ建つ白く優雅なノイシュバンシュタイン城が見えてくる。実に感動的である。
(実は取材班のMは、80年代前半の雪積もる冬に一度このノイシュバンシュタイン城を訪れている。その時彼は、興奮のあまり駐車場の溝に落ちそうになったらしい...)
大きな駐車場に車を停めて、 城のふもとのレストランで軽くドイツ料理とドイツビールで昼食を済ませた。ドイツに暮すようになってからというもの、水代わりにビールを注文する癖がすっかり身に着いてしまった!(店によってはビールが水より安いことも多いのだから仕方ない!?)

腹ごしらえも済み、いよいよノイシュバンシュタイン城へ。前もって電話で入場券を予約していたので、長蛇の列に並ぶことなく、16時15分のガイドツアーの入場券を入手できた。(ちなみにこの回の館内放送は日本語で行われ、他の言語圏の人はイヤホンをつけて見学していた。予約時に日本人とわかると、日本語の回にしてくれるようだ。)

電話でのチケット予約は下記まで。
Ticket Center: Tel.: 08362-9308321
その際は、念のために担当者の名前を聞いておくことをお薦めする。

さて、チケットを入手したら、乗合馬車もしくは徒歩で城門へ向かおう。健脚であれば約20分で歩ける距離ではあるが、道はかなり険しい。私達は、食後の運動が必要だったので徒歩で登ることにした。鬱蒼と茂る新緑の香りを満喫し、のんびりロマンチックな情緒に浸りながら登ろう!(しかし、この徒歩での昇り降りには乗合馬車の落し物に注意が必要である。緑濃い山間から見えるお城に気を取られているとベチャッという気持ち悪い感触と強烈な匂いに悩まされる事になるので、足元にも気を配りながら昇降されたし!)
梺では小さく見えていたお城も、近付くにつれて迫力を増し、まさに中世の童話から抜け出した白亜の城といったところである。
城内は写真撮影禁止なので、内部写真が欲しい人は売店でスライド写真を購入することをお薦めする。画質も良く、しかも安い!

ここで、ドイツで最も有名な観光スポットであるノイシュバンシュタイン城について少し説明しておこう。

幼少時代をホーエンシュヴァンガウ城で過ごし、詩や音楽を愛したルードヴィヒ2世は、遠乗りや散歩を通して、いつしかこの風光明美な場所に引き寄せられていった。遂に彼は、1869年に自己の夢を実現させる城を建てようと決心する。精魂込めて作ったこの城は、フランスのピエールフォンなどの中世のお城をモデルにしたもので、城全体はロマネスク様式で仕上げられた。城内にある城のデッサン図を見ると試行錯誤の様子が伺える。内部装飾はルードヴィヒ2世自らの指示で、白鳥の騎士ローエングリーンやトリスタンとイゾルデなどの中世騎士伝説をテーマとした壁画で飾られている。しかし、この彼の夢の城は、建設に丸17年の歳月が費やされたにもかかわらず、遂に完成をみなかった。彼は未完成のまま居住し始めるが、わずか102日しか住むことができなかった。彼は、1886年に精神病を理由に幽閉され、数日後にシュタルンベルク湖で謎の死を遂げる。悲劇的な運命を背負ったルードヴィヒ2世の人生を想いながら城を見学すると感動すら覚えるであろう。

彼についてもっと詳しく知りたい人には、2000年から公演されているミュージカル「楽園への憧憬」をお薦めする。私達は今回は残念ながら時間に余裕がなく観る事ができなかったが、機会があれば、是非観てみたいミュージカルだ。
スケジュールが合えば、 歌手の間(王座の間や豪華を極めた寝室と傾斜した天井が特徴の広間)で毎年9月に行われるコンサートも観てみたい。予約開始は6ヶ月前だが、良い席は直ぐに売り切れてしまうので、早めに手配したい。
Ticket Center: Tel.: 08362-819841
http://www.schwangau.de

お城に関するお薦めサイト:
Schlossneuschwanstein:

お城周辺のお薦めホテル:
Schlosshotel Lisl: Tel.:08362-8870

Hotel Alpenblick: Tel.:08362-50570


さてまだまだ明るいが、もう17時を回っている。次の目的地リンダーホーフ宮殿へ急ごう!

ノイシュバンシュタイン城からリンダーホーフ宮殿までは地図で直線距離にして約16kmと近いが、車の場合はオーストリアとの国境を超えなければならない。濃い緑に囲まれた抜群のドライブコースだ。しばらく走るとエメラルドグリーンの湖色豊かなプラン湖と雄大な山々が現れてくる。素晴しい!あまりの美しさに、僕達は車から降りて暫し湖畔に佇み、ゆっくり時間が過ぎていくのを肌で感じていた。
.........オッ〜ト先を急がねば。それにしても山間に展開する濃い森緑と山岳の静寂境の美しさはたとえようもない。ルードヴィヒ2世が好んで散策したこの辺は、100年以上を経た今日でも変わる事なく神秘に包まれた幽玄の世界に僕達を誘ってくれた。何度も言うが、実に感動ものだった。また来たい!

約2時間後、リンダーホーフ宮殿へ着いた。が、見学時間は過ぎていた。トホホ。しかし、オーバー・バイエルン、グラスヴァング谷に建つ優美なロココ風のリンダーホーフ宮殿は外観だけでも充分満足できた。(宮殿の中を見なければ意味がな〜い!......と満足できなかったM氏は、数カ月後に再び訪れて内部を見学したらしい......?)

それではここのキオスクで買い求めた案内書をひもといてみよう。


“ここをリンダーホフと呼ぶのは、その昔、リンダー家の屋敷(ホフ)があったからで、そのリンダー家の名は庭園の右手にそびえる樹齢300年の菩提樹(リンデ)の巨木に由来する。この地にはルードヴィヒ2世の父マクシミリアン2世がすでに「王家の小屋」と呼ばれる狩猟小屋を持っていたところで、王にとっては幼年時代より親しんだ土地であった。1867年パリに遊んだルードヴィヒ2世は、ヴェルサイユ宮殿に魅せられ、ブルボン様式に心酔した王が新しい「ヴェルサイユ」を目指してリンダーホフに計画したものであったが、山の中にあるここではヴェルサイユのような大規模な宮殿の造営にはふさわしくなく、この計画は放棄され、のちにヘレンキムゼーで実現されることとなる”

リンダーホフ宮殿の概要サイト:

このリンダーホーフ宮殿はルードヴィヒ2世の建てた3つのお城の中で唯一1888年に内装・外装ともに完成する事が出来たお城である。僕達は宮殿内の見学が出来なかったので、宮殿周辺の庭園を散歩した。金色豪華な噴水、綺麗に手入れされたミニ庭園など観光客が帰ったあとだったのでゆっくり散歩ができた。それにしても中腹右手にある樹齢300年の菩提樹は壮大だ〜!
ルードヴィヒ2世が幼少の頃、この菩提樹の回りで何をして遊んでいたのだろうか?また、この宮殿が完成した時に彼は何をこの菩提樹に話しかけたのだろうか?いろんな想像が頭を過っていき暫しルードヴィヒ2世本人になりきって瞑想していた.......とその時「オ〜イ、腹減った〜ミュンヘン行くゾ〜」とM氏の声で現実世界に呼び戻された。
そうだ、ミュンヘンで友人との夕食の約束があったのだ。というわけで、急いで本日の宿泊先ミュンヘンへ。

牧歌的な田園風景が美しくパノラミッックに展開する
ホーエンシュヴァンガウ城
優雅な白亜のノイシュヴァンシュタイン城
2頭立ての乗合馬車乗合馬車の看板
ファンタジックな白亜のお城は迫力もあった
お城の中庭でガイドツアーの順番を待つ。
子供はいつも無邪気!
テラスから望む山並とアルプ湖
唯一デジカメで隠し撮りした階段の天井。ルートヴィッヒ2世が好んだブルーとヤシの木に支えられた幻想的な天井である。

エメラルドグリーンが素敵なプラン湖

優美なロココ風リンダーホフ宮殿
グラスヴァング谷と対峙する方向から宮殿を望む
手入れも素晴しいミニ庭園
観光客が帰っていった宮殿は噴水も動いてなく、静寂としていた
ルードヴィヒ2世の好んだブルー陶器
金色豪華な噴水
宮殿側からみた庭園。
右中腹に樹齢300年の菩提樹が見える